「ブリュ・クラウド」つまり「青い雲」といふ名で、青黒い毛のすばらしい大
猫だつた。
小型や中型の日本犬は、犬同志だとむやみにケンカしたがるが、
猫だのほかの小さな動物などとは仲良しになる習性がある。
が、まず
猫ほどではないにしろ、勝手の違う気だけは起ったはずである。
羅生門の樓の上へ出る、幅の廣い梯子の中段に、一人の男が、
猫のやうに身をちゞめて、息を殺しながら、上の容子を窺つてゐた。
眼を抜かれても、髭を抜かれても
猫は生きているにちがいない。
が、
猫は鋭い目にぢつと彼を見つめたまま、寄りつかうとする気色も見せなかつた。