義助 (竹垣の折戸から舞台へ出て来ながら、屋根を見上げて)あなに焼石のような
瓦の上に座って、なんともないんやろか。
けれども今はもう赤
瓦の家や青
瓦の家の立ち並んだ所謂「文化村」に変っていた。
高い曇天の山の前に白壁や
瓦屋根を積み上げた長沙は予想以上に見すぼらしかった。
が、尼提はいよいよ驚き、とうとう
瓦器をとり落した。
二階は天井の低い六畳で、西日のさす窓から外を見ても、
瓦屋根のほかは何も見えない。
勿論その外に石原通りや法恩寺橋通りにも低い
瓦屋根の商店は軒を並べてゐたのに違ひない。
そこには又赤い柿の実が、
瓦屋根の一角を下に見ながら、疎に透いた枝を綴つてゐる。
されば身のたけも抜群なに、性得の剛力であつたに由つて、伴天連が「ぜんちよ」ばらの石
瓦にうたるるを、防いで進ぜた事も、一度二度の沙汰ではごさない。
踏切りの近くには、いづれも見すぼらしい藁屋根や
瓦屋根がごみごみと狭苦しく建てこんで、踏切り番が振るのであらう、唯一旒のうす白い旗が懶げに暮色を揺つてゐた。
そこにはまた赤い柿の実が、
瓦屋根の一角を下に見ながら、疎らに透いた枝を綴っている。