手にとればうす黄のりんご香りたつ
熟れみのりたる果物の息
あまり成育しない前に、
熟れてしまった果物のような、小柄な、身体全体が、ピチピチした——深々とした眼、小さい鼻、小さい唇の、生々とした新子の妹、美和子である。
今過ぎて来た田舎町の店々に
熟れ切つて赤黒く光つて居た柿の実の色が眼に残つて居る。
そこからは、
熟れいきれ切った、まったく堪らない生気が発散していて、その瘴気のようなものが、草原の上層一帯を覆いつくし、そこを匂いの幕のように鎖していた。
その沼へは、山柿が枝を垂れ、枝には、澄み切つた青空のこちらに、
熟れ切つた山柿が鈴なりになつてゐた。