手が、砂地に引上げてある難破船の、纔かにその形を
留めて居る、三十石積と見覚えのある、その舷にかかって、五寸釘をヒヤヒヤと掴んで、また身震をした。
家に仕ふる者ども、其物音に駈附けしも、主人が血相に恐をなして、
留めむとする者無く、遠巻にして打騒ぎしのみ。
野口君は、寝巻に着換えてから一人で出て行かれたようですが多分便所へでも行くのだろうと思って別に気にも
留めませんでした。
「わたくしはこの庄に足を
留めてから二、三年になりますが、実はひそかに盗賊を働いていたのでございます」
目覚めて窓の戸、おしあけ庭の面見やれば、色つきそめし叢、咲乱れし千草不残にも野分にふき乱され「つらぬき
留めぬ玉ぞちりける」。
「そうか」と、云ったばかりで、半七はべつに気にも
留めないでいると、つづいてお粂の声がきこえた。
こっちが気にも
留めないので、多吉もそれぎり黙ってしまった。
用達の為に歩き廻る途中、時々彼は往来で足を
留めて、おせんのことを考えた。
口々に押宥め、民子も切に慰めて、お前の病氣を看護ると謂つて此處に足は
留められぬ。