ところが塔内に入ってドアを締め終った老
看守は今度は身をすりつけるようにして急に声をおとすと、訴えるように言った。
「イギリスは、いまドイツと闘っていると
看守がいったが、このことだな。
すると
看守は横を向いたまま、僕の言葉を聞かないうちにさっさと向うへ行ってしまった。
現に死刑の行われた夜、判事、検事、弁護士、
看守、死刑執行人、教誨師等は四十八時間熟睡したそうである。
たまに
看守や観覧人に遇っても、じろじろ顔を見られるのはほんの数秒の間だけである。
若し
看守さへゐなければ、馬に乗つたジアン・ダアクの飛び出すのに遇つても驚かないかも知れない。
本年の三月に僕がちょっと東京監獄へはいった時にも、やはりこの老
看守は、その十二年前のやはり三月に僕が初めて見た時と同じように、まだこの前科割りを続けていた。
ほかの囚人を一緒に入れる筈はないのに、とは思ったが、
看守の間違いにしろ何にしろ、とにかくほかの囚人と接触するのは面白いと思って黙っていた。
受持の
看守部長が名簿をひろげて、一列にならんでいるみんなの顔とその名簿とを、しばらくの間見くらべていた。
薩摩なまり、東北なまり、茨城弁など、数多の
看守が立ちかわり入れかわり、同じようなことを幾度となく聞きただしては手帳につけて行く。