これは日比谷公園のベンチの下に落ちていた西洋
紙に何枚かの文放古である。
それがまた生れ年は勿論、名前を書いた
紙もついていない。
しかし内容はともかくも、
紙の黄ばんだ、活字の細かい、とうてい新聞を読むようには読めそうもない代物である。
黄色い芭蕉布で煤けた
紙の上下をたち切った中に、細い字で「赤き実とみてよる鳥や冬椿」とかいてある。
殊に黄色い
紙を張った扇を持っているのが、灯の暗いにも関らず気高くはっきりと眺められた。
こんな美しい令嬢も、やはり
紙と竹との家の中に、人形の如く住んでゐるのであらうか。
されど、嗚呼されど、予は硯に呵し
紙に臨んで、猶惶々として自ら安からざるものあるを覚ゆ。
それから廊下に接した南側には、殺風景な鉄格子の西洋窓の前に大きな紫檀の机を据ゑて、その上に硯や筆立てが、
紙絹の類や法帖と一しよに、存外行儀よく並べてある。
先生の顔は、半ば頬をその
紙の中にうずめながら、静かに眼をつぶっていた。