その春、私が連れて行かれたその狂院に咲き満ちて居た桜の花のおびただしさ、海か密雲に対するように始め私は
茫漠として美感にうたれて居るだけでした。
それもやがて杜絶えて、一筋の往還がまつたく蕭々たる初冬の象徴の様に
茫漠とした田甫なかに来しかたはるかに、行く手果てなく続くのでありました。
茫漠たる人生の行路を思うとき、自分自身の運命について、おぼろげながらも知りたいと云う気がしている。
それは未だ
茫漠として、明かな形を成してはゐないけれど、確かに存在してゐる。
その六、七百ページを、ことごとく訳し終って、所定の稿料を貰える日は、
茫漠としていつのことだか分からなかった。
其で居て、何だか
茫漠とした感じのあるのが、よさと謂える湯治場である。
そしてその尨大な容積やその藤紫色をした陰翳はなにかしら
茫漠とした悲哀をその雲に感じさせた。
五分間も経った頃、六七名の兵士たちは、銃をかついで、
茫漠たる曠野を沼地にむかって進んでいた。
その雲はその尨大な容積のために、それからまたその藤紫色の陰翳のために、
茫漠とした悲哀を感じさせた。