窓越しに見ると、
莟のふくらみかけた大木の丁子の枝遷りして、わが世の春の閑かさ暖かさをこの時に萃めているように。
円髷、前垂がけ、床の間の花籠に、黄の小菊と白菊の大輪なるを
莟まじり投入れにしたるを視め、手に三本ばかり常夏の花を持つ。
水色縮緬の蹴出の褄、はらはら蓮の
莟を捌いて、素足ながら清らかに、草履ばきの埃も立たず、急いで迎えた少年に、ばッたりと藪の前。
青やかな楚枝に、
莟の梅が色めいて来ると、知多院内の万歳が、山の向うの上国の檀那親方を祝き廻るついでに、かうした隠れ里へも、お初穂を稼ぎに寄つた。
と同時にまっ白な、光沢のある無数の糸が、半ばその素枯れた
莟をからんで、だんだん枝の先へまつわり出した。
さうしてそれが頭の上の水面へやつと届いたと思ふと、忽ち白い睡蓮の花が、丈の高い芦に囲まれた、藻の※のする沼の中に、的※と鮮な
莟を破つた。
其の
莟の雪を拂はむと、置炬燵より素足にして、化粧たる柴垣に、庭下駄の褄を捌く。
名道人畏り、白き長き鬚を撫で、あどなき顏を仰向けに、天眼鏡をかざせし状、花の
莟に月さして、雪の散るにも似たりけり。