景気の好いのは、蜜垂じゃ蜜垂じゃと、
菖蒲団子の附焼を、はたはたと煽いで呼ばるる。
そこン処は梅林で、上の山が桜の名所で、その下に桃谷というのがあって、谷間の小流には、
菖蒲、燕子花が一杯咲く。
晃 いや……お手伝いという処だが、お百合さんのそうした処は、咲残った
菖蒲を透いて、水に影が映したようでなお綺麗だ。
あの五月の端午の
菖蒲のごときも、あやめ・しやが・かきつばたなど一類の花を、女精のしむぼるとしてゐるのから見ても知れよう。
まだ葉ばかりの
菖蒲杜若が隈々に自然と伸びて、荒れたこの広い境内は、宛然沼の乾いたのに似ていた。
女扇の竹青きに紫の珠を鏤めたらん姿して、日に日に装増る、草
菖蒲といふなりとぞ。
藤、山吹、
菖蒲と数へてくると、どうもこれは唯事ではない。
おや、あの
菖蒲革の莨入は、どこへ忘れて御出でなすつた?