皮膚の色が並はづれて黒い上に、髪や鬚の縮れてゐる所を見ると、どうも葱嶺の
西からでも来た人間らしい。
まずつきあたりに空色の壁、それから真新しい何畳かの畳、最後にこちらへ後を見せた、
西洋髪の女が一人、——それが皆冷やかな光の中に、切ないほどはっきり映っている。
僕はいつか
西廂記を読み、土口気泥臭味の語に出合った時に忽ち僕の母の顔を、——痩せ細った横顔を思い出した。
その顔がまた、どれもいつになく微笑を浮べているのは、
西楚の覇王の首をあげた今日の勝戦の喜びが、まだ消えずにいるからであろう。
キャバレエ十番館の裏は、
西木屋町に面し、高瀬川が流れた。
そこで彼は或日の夕方、もう一度あの洛陽の
西の門の下へ行つて、ぼんやり空を眺めながら、途方に暮れて立つてゐました。
南は山影暗く倒に映り北と東の平野は月光蒼茫として何れか陸、何れか水のけじめさへつかず、小舟は
西の方を指して進むのである。
日はやや
西に傾いて赤とんぼの羽がきらきらと光り、風なきに風あるがごとくふわふわと飛んでいる、老人は目をしばたたいてそれをながめている、見るともなしに見ている。
南は山影暗くさかしまに映り、北と東の平野は月光蒼茫としていずれか陸、いずれか水のけじめさえつかず、小舟は
西のほうをさして進むのである。