人生は到底逃れられない一種の係
蹄であると思ふ外はなかつた。
「ここに鼬の係
蹄が仕掛けてあるよ」「あれが鵯を捉える羽子だ」そして、「茸を生やす木」などと島吉が指さすのを見ながら、これが東京とは思えなかった。
弁当の握り飯を鞍につけ、手拭を裂いてゲートルとし、馬子に鞭代りの細竹を折らせて、
蹄の音高く宿を出た。
沓の音も、
蹄の音も、あるいはまた車の音も、そこからはもう聞えて来ない。
苦力どもの汗みどろな癇癪でのべつにひっぱたかれる馬どもが、死にもの狂いの
蹄で土煙を蹴立て、蹴あげて、その土煙から脱れようとして藻掻き廻っていた。
ちょうど飯場へつく山を一つ廻りかけた時、後から馬の
蹄の音が聞えた。