それが縁になって、臆面のない本多はとなりの女連れの
身許や姓名などをだんだんに聞き出した。
「女の
身許はまだわからぬのだね?」と霧原警部はたずねた。
それからこれは附け足りだが、三人が三名とも名刺入れをもっていて、直ぐに
身許が判明したそうだ。
男の
身許は判らないが、ともかくも小綺麗な服装をしていて、月に二、三度は欠かさずにこの路地の奥に姿をみせている。
ともかくも一応はなだめて連れて行って、それから
身許その他の詮議をしようとすると、男はなかなか動かない。
身許不明の此の娘がどうして此の屋根のうえに登ったのか、その判断がなかなかむずかしかった。