わたしが毎月一度ずつ必ずその原を
通り抜けたのは、本郷の春木座へゆくためであった。
すばらしい展覧会を見てその会場を通りぬけたもののやうに長時間その文学の中に浸つてゐた私が、或るときその中を
通り抜けたきりもう一度その中にはいらうとしなかつた。
無事に裏木戸まで
通り抜けたものには、景品として浴衣地一反をくれるとか、手拭二本をくれるとか云うことになっているので、慾が手伝ってはいる者も少なくないんです」
お住は仁太郎の棺の前へ一本線香を手向けた時には、兎に角朝比奈の切通しか何かをやつと
通り抜けたやうな気がしてゐた。