さっき米原を
通り越したから、もう岐阜県の境に近づいているのに相違ない。
彼女はだんだんに気味が悪くなって来て、物取りや巾着切りなどということを
通り越して、なにか一種の魔物ではないかとも疑いはじめた。
殊に門弟らに対しては厳格を
通り越して厳酷ともいうべき程であった。
旧暦の八月なかばで、朝夕はめっきりと涼しくなったが、きょうは袂涼しいのを
通り越して、単衣の襟が薄ら寒いほど冷たい風がながれて来た。
これが化けそうに大きくなると、もう可愛いどころか、憎らしいのを
通り越して何だか薄気味が悪くなりますよ。
通り越して、ひょいと向うを見ると、はしなくも目にうつったのは、「易断」と丸提灯に染めぬいた大道易者のささやかな屋台です。
さみだれにかわずのおよぐ戸口かな、という句があるが、これがさみだれを
通り越してつゆになったとなると、かわずが戸口に泳ぐどころのなまやさしいものではない。
不機嫌を
通り越して毒念ともいふべきものがのた打つて来た。
へい、それが間に合いませんので……火を引いたあとなもんでなあ——何の怨みか知らないが、こうなると冷遇を
通り越して奇怪である。
それを見て取ると葉子の心の中はかっとなったが、笑みかまけたひとみはそのままで、するすると男の顔を
通り越して、左側の古藤の血気のいい頬のあたりに落ちた。