※底本手紙の写真のキャプションに、(東京 中村
鋼子氏蔵)とあります。
死んで焼くと男と同じタダの白骨には相違ないが、女骨プラス慾念の場合には何かと何かを化合すると特殊
鋼ができるような化学作用をあらわすらしいや。
しかし見方によつては
鋼の螺線で作つたルネサンス式の図案様式の扉にも思へた。
言葉をかへていへば地球の平均のしぶとさは
鋼鐵の一倍半である。
大地は底深く凍つて了つて、歩くと
鋼鐵の板を踏む樣な、下駄の音が、頭まで響く。
潦の傍には、
鋼線で拵へた樣な、骨と皮ばかりに痩せて了つた赤犬が一疋坐つてゐた。
秋も既う末——十月下旬の短かい日が、何時しかトップリと暮れて了つて、霜も降るべく
鋼鐵色に冴えた空には白々と天の河が横はつた。