自分でハッキリ記憶が残っていると信
じ得るだけ、むしろ、他からのハタラキが多いのだと言い得るであろう。
画家はこのモデルから自分の独特の曲線を感
じ得るのかも知れないが、その人自体は美の対象ではないようだ。
と同時に、この私が、はかないながらも、淡いながらも、ここに消極的の愉快を感
じ得るに至ったのも、私自身の一幸福である。
蕪村の「暮春」を詠ぜし後、誰か又独自の眼光を以て「暮春」を詠
じ得るの確信あらんや。
彼等が百代の後よく砂と金とを弁
じ得るかどうか、私は遺憾ながら疑ひなきを得ないのである。
ほかから考へると、どうにもしやうのないことを、ある勘で、なんとかなると信
じ得る人である。
方言の美しさ、子供の片言の美しさなどを感
じ得る人は、「言葉の魅力」について、世間の人達が、どんなに無関心であるかに気がつく筈である。
やがて、多くの優れた芸術家の如く、生活のなかで感
じ得る時代が来るだらう。
然るに、劇作家のみは何故に、客観的態度を以て人生の「劇的葛藤」に注目し、劇作家ならずとも感
じ得る「興味」を捉へて、これを公衆に示す義務があるのだらう。
新しい生活様式、つまり現代日本人の生活中から、動性と心理とを通じて、詩と造形美を感
じ得るに至つて、始めて、われ/\は、「われ/\の演劇」を有ち得るであらう。