わたしは勿論振りかへらずにさつさと足を早めつゞけた、湿気を孕んだ一
陣の風のわたしを送るのを感じながら。
僕は一
陣の風の中に餌ものを嗅ぎつけた猟犬のやうに、かすかな戦慄の伝はるのを感じた。
崖はそもそも波というものの世を打ちはじめた昔から、がッきと鉄の楯を支いて、幾億尋とも限り知られぬ、潮の
陣を防ぎ止めて、崩れかかる雪のごとく鎬を削る頼母しさ。
それは丁度一
陣の風によつて惹起された水の上の波が、互に相剋しつゝ結局鏡のやうな波のない水面を造り出すに至るのと同様である。
が、攻撃の令は容易に下らないのみか、御所の使番が三騎、白馬を飛ばして、諸
陣の間を駆け回りながら、
そして、横山城の北竜ヶ鼻に
陣して、家康の来るを待った。
かく觀じ來れば、世界は今日、統制主義のアメリカと專制主義に後退せるソ連との二大
陣營の對立と見ることもできる。
何處からともなく吹きまくつて來る一
陣の呵責の暴風に胴震ひを覺えるのも瞬間、自らの折檻につゞくものは穢惡な凡情に走せ使はれて安時ない無明の長夜だ。
傍に一本、榎を植ゆ、年經る大樹鬱蒼と繁茂りて、晝も梟の威を扶けて鴉に塒を貸さず、夜陰人靜まりて一
陣の風枝を拂へば、愁然たる聲ありておうおうと唸くが如し。