あまり気が鬱するので、庭の花園山に登つて、手飼の猿、手白(てじろ)を相手に慰んでゐる姿を隙見した継母は、自分の子とも知らず、恋に
陥る。
しかも原文に拠ればとかくに堅苦しい漢文調に
陥るの弊あり、平明通俗を望めば原文に遠ざかるの憾みあり、その調和がなかなかむずかしい。
散歩の途中、住宅街の裏通りなどで、植込みのなかに夏蜜柑の黄に色づいたのを見かけると、土地に馴れない私は、つい、季節の錯覚に
陥る。
これは屡々所謂、旧時代の名優なるものの
陥る弊である。
しかしまた、或る作品の女主人公に扮した女優が、その作品の作者と恋愛関係に
陥ることも稀ではない。
そして、僕自身、屡々、事芝居に関する限り、書くものがこの調子に
陥るのである。
が、城
陥ると共に、病を獲て、兵を収めて信州に入り、病を養ったが遂に立たず老将山県昌景を呼んで、「明日旗を瀬田に立てよ」と云いながら瞑目した。
怪談と言っても、いわゆる幽霊物語ばかりでは単調に
陥る嫌いがあるので、たとい幽霊は出現しないでも、その事実の怪奇なるものは採録することにした。
何となれば人物は動力(源因)なくして偶然不幸悲惨の境界に
陥るものなければなり。
人性本然の向上的意力が、かくのごとき休止の状態に
陥ることいよいよ深くいよいよ動かすべからずなった時、人はこの社会を称して文明の域に達したという。