次郎左衛門が野州佐野の宿を出る朝は一面に白い
霜が降りていた。
のみならずどこか中世紀じみた門には太い木の格子戸の向うに、
霜に焦げた檜などのある、砂利を敷いた庭を透かしていた。
三人は白い息を吐きながら堤に沿うてのぼってくると、平助は
霜にすべる足を踏みこらえるはずみに新らしい草履の緒を切ってしまった。
そしてある日、屏風のように立ち並んだ樫の木へ鉛色の椋鳥が何百羽と知れず下りた頃から、だんだん
霜は鋭くなってきた。
それに続いた桑畑が、晩秋蚕もすんでしまったいま、もう
霜に打たれるばかりの葉を残して日に照らされていた。
吉田は猫の鼻が冷たくてその毛皮が戸外の
霜で濡れているのをその頬で感じた。
先生は
霜のために危く崩れかけた石垣などまで見て廻った。
そしてその七日八日九日は三朝続いたひどい
霜で、八ツ手や、つわぶきの葉が萎えた。