先づ綱を挙ぐれば網の細目はおのづから挙がり、先づ
領を挙ぐれば衣の裙裾はおのづから挙がるが如く、先づ隅田川を談れば東京の諸流はおのづから談りつくさるべき勢なり。
ここに細川方の幕僚で丹波を
領している細川下野守教春も、その数に洩れず、急いで国元へ引返して行きました。
細川勢は、抑えに抑えた河水が堤を決したように、天草
領へ雪崩れ入った。
だが此時毛利は芸州吉田を
領し、其所
領は、芸州半国にも足らず、其の軍勢は三千五、六百の小勢であった。
所が、沼田の城代となった猪俣範直と云う武士が、我無しゃらで、条約も何にも眼中になく、真田
領の名胡桃まで、攻め取ってしまったのである。
立てきった障子にはうららかな日の光がさして、嵯峨たる老木の梅の影が、何間かの明みを、右の端から左の端まで画の如く鮮に
領している。
その佐倉
領のうちで、村の名は忘れましたが、金右衛門、為吉という二人の百姓が江戸へ出て来ました。
看護婦は医学士の旨を
領してのち、かの腰元に立ち向かいて、
堤防の内は一面に黄色な枯れ葦に
領された広大な窪地であった。
松脂の匂と日の光と、——それが何時でも夫の留守は、二階建の新しい借家の中に、活き活きした沈黙を
領してゐた。