はて珍らしいというのでそれを捕ろうとすると、
鴨めは人を焦らすようについと逃げる。
けれども桂月先生は、小供のように首をふりながら、「なに、これでたくさんだ」と云い/\その黐だらけの二羽の
鴨を古新聞に包んで持って帰った。
鴨でも、鯛でも、鮎でも雄の方へ一足先に季節がくる。
西風の夜のこの獲物は、
鴨が葱を背負ってきたようなものだった。
下萠、雪解、春浅し、残る
鴨などはよい季題だ」「そろそろうぐいすの啼き合わせ会も、根岸あたりで催されましょう」
鴨の流れは水音もなく、河原の小石を洗いながら、南に向かって流れていたが、取り忘れられた晒し布が、二筋三筋河原に残って、白く月光を吸っていた。
へん、お堀端あこちとらのお成り筋だぞ、まかり間違やあ胴上げして
鴨のあしらいにしてやらあ」
老栓は注意して見ると、一群の人は
鴨の群れのように、あとから、あとから頸を延ばして、さながら無形の手が彼等の頭を引張っているようでもあった。
「をしと思ふ人やとまるとあし
鴨のうち群れてこそ我はきにけれ」