神奈川辺から新しい材木とセメントの乾燥した粉が鎚や
鶴嘴のしつきりなく音してゐる空に泌みこんで潮風に濡れて来る。
土間の隅には、割り竹の先に結びつけてある煤によごれた黒い大きな丸い刷毛や、溝掃除に使う鍬、
鶴嘴、長い竹箆などが散乱していた。
その洞門のうがたれつつある巌壁の前には黄の菰莚、バラック、
鶴嘴、印半纒、小舟が一二艘、爆音、爆音、爆音である。
しかも、そうした場所にひとたび
鶴嘴を入れるや、必らず上部に地滑りが起り、しだいに亀裂を生じて、ついにはこれが数千メートルにも及ぶ始末である……」