此島では、つひ七十年前まで、上方の都への消息に「もしほたれつゝ」
わびしい光陰の過し難さを訴へてやつた人たちが住んでゐた。
其処で、寺子屋の師匠として、
わびしい月日を送つて、やがて、死んで行つた事も、聞えて来たと聞く。
まだ彼岸に入ったばかりであるというのに、もう北羽州の峡間に臨むこの温泉の村は秋たけて、崖にはう真葛の葉にも露おかせ、障子の穴を通う冷風が肌に
わびしい。
その
わびしい服装に引きかえて、この少年は今夜の月に照らされても恥ずかしくないほどの立派な男らしい顔をもっていた。
房枝の
わびしい魂はどうすることも出来ないなやみを包んで、いつまでも、波間にゆられつづける。
もっとも初から捨てさせるつもりで何処ぞで呉れ、捨てるつもりで被て来たには相違無い
わびしいものであった。
原をめぐった山々はいずれも
わびしい灰色の霧につつまれて、薄い夕日の光がわずかにその頂をぬらしている。