その姉が今度帰ればもういないのだと思うと、丈夫な歯が抜けたように心の
一隅が空ろである。
だが、それよりも先程から彼の心の
一隅にはどうしても払いのけることの出来ない黒い雲のわだかまりがあるのだ。
ちょうどその時、前田氏の広い庭園の
一隅で五、六本の山桜が開きかけていた。
谷間から丘にかけて一帯に耕地が固くなって荒れるがまゝにされている中に、その
一隅の麦畑は青々と自分の出来ばえを誇っているようだった。
その教授は自分の主裁している研究所の
一隅に彼のための椅子を設けてくれた。
蒼白なる顔を外套の襟に埋めて車窓の
一隅に黙然と坐して居る一青年を同室の人々は何と見たらう。
そして彼自身はその打ち場から、百五十歩ばかり遠のいた、草地の
一隅に位置を定めた。
他の
一隅には小さな三角形の板張りがあって、土瓶、小桶などが置いてある。
日本詩壇に於ける象徴詩の伝来、日なほ浅く、作未だ多からざるに当て、既に早く評壇の
一隅に囁々の語を為す者ありと聞く。
有る——少くとも、我々をしてそういう風に疑わしめるような傾向が、現代の或る
一隅に確に有ると私は思う。