紹介状には川島浪子とだけ書いてあって、
人妻か未亡人か、どういう身分の婦人であるかがまるでわからなかった。
精神の恋が清らかだなどゝはインチキで、ゼスス様も仰有る通り行きすぎの
人妻に目をくれても姦淫に変りはない。
あとは召使いだけで、三枝子(十八)オソノ(十八)の女中二名と、馬丁の当吉(三八)同
人妻ラク(三六)、主従合せて五人だけだ。
瑠璃色に澄んだ中空の樹の間から、竜が円い口を張開いたような、釣鐘の影の裡で、密と、美麗な婦の——
人妻の——写真を視た時に、樹島は血が冷えるように悚然とした。