センチな純情派、
偏屈な童貞型、特攻隊の中でも童貞型がまゝあるが、京二郎はセンチでも
偏屈でもなかつた。
若い人が常に眷いて集まったので推しても、一部に噂されるような
偏屈な狭隘な人でなかったのは明白である。
むしろ表面はごく捌けた都会っ子で、
偏屈な妹には薬になるかも知れない。
別に活計に困る訳じゃなし、奢りも致さず、
偏屈でもなく、ものはよく分る、男も好し、誰が目にも良い人。
その生涯を通じて親友の悉くを失つた一代の
偏屈屋ジュウル・ルナアルさへ、彼だけには腹を立てなかつたらしい。
斯うしてたうとう荊棘の道を踏み分け他を凌駕して私は
偏屈な室長と無二の仲好しになつた。