中でも「浮雲」は、敗戦に対する日本人の
偽りない心情告白の書として、後世にのこる意味をもっていると思う。
「魚屋様は商人でのご名家、嘘
偽りないお方、それゆえ現金は戴かずとも、必要の際にはいつなりとも用立て致すとお認し下されば、それでよろしゅうございます」
だれも、彼がコーヒーをたしなむことに
偽りがあるとは思はなかつた。
「自分も人間でありながら、その人間がわたしを人間嫌ひにする」さう云ふあなたの言葉に
偽りのあらう筈はない。
けれども、それが微塵も
偽りのない実相なので、事実河竹に杏丸という二人の助手以外には、この私でさえも入ることを許されていなかったのだ。
げに
偽りという鳥の巣くうべき枝ほど怪しきはあらず、美わしき花咲きてその実は塊なり。