（
家内はもともと消極的な女で実につつましい片隅の家庭生活の幸福だけを私に望んでいたので、所謂私の世間的な出世や華々しい成功などは寧ろ嫌っているのでありました。
六週間以前に、
家内と僕とが二人連れで、家具付きのアパートメントをさがしに出て、ある閑静な町をとおると、窓に家具付き貸間という札が貼ってある家を見つけたのだ。
家内の者もびっくりして、すぐ医者を呼んで来たがもう遅かった。
先生は
家内と同じ疾のものが挑動つ時の呼吸を聞た事があるかネ。
長「直にったって大騒ぎなんで、
家内に少し取込があるんで、年頃の一人娘のあまっちょが今朝出たっきり帰らねえので、内の女房も心配してえるんでね」
武「是は御
家内か、私も酒が嗜きでな、此処を通る度に御亭主が飲んで居る、今一寸買物をして見ると矢張飲んで居て羨しく遂やる気になりました」
午後二時ごろで、たいがいの客は実際不在であるから
家内しんとしてきわめて静かである。
