そしてそれらの人々の脳裡に宿つた現実に比べたなら、地上の快楽はなんとまた貧しく、秘密なく、あまつさへ幻滅に
富むものでありませうか。
袋猫々探偵なら、奇賊烏啼を扱うには誰よりも心得ているだろうから、奇賊をして繭子夫人に一指をも染めさせないであろうと、善良にして慈愛に
富む夫は述べたことだった。
最後に、ララ夫人が、「森」と題する男女混声の詩的朗誦に於て、甚だ示唆に
富む試みを企て、「言葉の交響楽」ともいふべき一新形式を組立ててゐるのを知つた。
聡明で敏感で柔軟性に
富む舞台俳優は、当分、映画に於ける、その地位を失ふまいと思はれる。
われわれは、巧まずして親しみを籠め、狎れずして魅力に
富む笑顔を求めてゐる。
万一警察から何か云つて来たら、不肖私が全責任を負ふつもりであると、悲壮にして愛嬌に
富む一場の挨拶を行つた。
この木は、高さ三丈許、葉の状は箭鏃の如くにして平滑、その果は竜眼(新村出氏の『辞苑』にその図出づ)の実に似て、熟すれば真赤になり、肉は白くして甘き汁に
富む。
もし巨石群の遺跡に
富む「男かん」「女かん」二峰の神南備山が、鬼門を守つて立つならば、この高山の石仏は、正にその正反対の裏鬼門にあたる。