そうして今、この同じ電車の中で彼の姿を見るに及んで、清三はいよいよ主人の雇った探偵に
尾行されていることを意識したのである。
この形勢では
尾行者たちに勝利が行ってしまいそうだ。
男は、この首領の後をつけてやろうと思い、十五、六間も後から、気取られないように、そっと
尾行した。
「そうさな、恐ろしくもないわけだな……でそれでは今日まで後を
尾行た事もないのだな?」
そういった途端、うしろからボソボソ
尾行て来た健坊がいきなり駈けだして、安子の傍を見向きもせずに通り抜け、物凄い勢いで去って行った。