夕暮れ、社長室へ呼び込まれて馘首の話をきいてゐるとき、呂木は自分の体臭から夥しいアスピリンの
悪臭を嗅ぎ出した。
さうして私は、ひつそりした白樺の林を静かに通る濡れた鼻髭を思ひ鼻髭の中に勝れた一人の「男」を感じ、自分の疲れをきな臭い
悪臭の底に見つけてしまふ。
しかし僕は夢の中にゴムか何か燃やしてゐるらしい
悪臭を感じたのを覚えてゐる。
いくら燻製にしても、羊特有の、あの動物園みたいな
悪臭は消えるものか」
アカデミスムとコンマアシヤリズムとの交叉点は、幸にして
悪臭鼻をつくものがある。
そのまた嗅覚の刺戟なるものも都会に住んでいる悲しさには
悪臭と呼ばれる匂ばかりである。
悪性の病をわずらって
悪臭を放ち、それを消すために安香水の匂いをプンプンさせていたが、そんな頭の働かせ方がむしろ不思議だとされていた。
誰でもさうだらうが、私も体が弱るにつれて、それが
悪臭なら無論、芳香であつても、すべてのにほひといふにほひには全く堪へ性がなくなつてしまふのである。