二人は互に相手が洋装の女の秘密を悟った事を知り、互に最早相手を
撒く事が出来ない事を観念したのだ。
その中に婆やが畳の上に握っていた碁石をばらりと
撒くと、泣きじゃくりをしていた八っちゃんは急に泣きやんで、婆やの膝からすべり下りてそれをおもちゃにし始めた。
この日のために特に刷つた赤字のビラやパンフレット、この日の見物に売捌かうと抱へて来た労働新聞を傍列の赤シャツや黒ヅボンが両側の人波へさあさあと
撒く。
と一応怒鳴り廻してから、砂袋の中から五色の砂を取りまぜて握り出しては門の石だたみの上にそれをさっとはくように
撒く。