とにかく、宣長翁の訓み方そのまゝでは、奈良朝の
文脈で訓んでゐる事にはならぬのである。
漢
文脈の方は、後に「万春楽」と称する程、其句をくり返したのだが、国
文脈の物は「あらればしり」と言ふ位『よろづ代あられ』を囃し詞に用ゐる様になつた。
なるほど他の人々と比べて見ると、一見不熟な、ありふれた直譯文の
文脈などをとり入れてゐるが、あれが又、日本の文章の組織に十分に移しこまれてゐるのだ。
故事出典その他修辞上の装飾には随分、仏書漢籍の影響も見えるが、
文脈に至っては、純然たる日本の女言葉である。