いやそれよりも彼女は
月明の中に疾駆する興奮した気持ちを自分独りで内密に味わいたかったから。
月明の谿々に、響きわたるさまは、何というか、いと物すさまじい其の場の光景でした。
あたくし昼間は、強いてなにも考えずに眠りませんけれど、夜は、
月明をえらんで里から里へとわたり、末起ちゃんの寝顔をそっと見てくるんですのよ。
「處がだあ、へゝゝ、其の晩からお前、燈を暗くすると、ふつと婦の身體へ
月明がさしたやうに成つて、第一な、色が眞白く成るのに、目が覺るだ。
彼の女、幽に青き瓔珞を輝かして舞へば、山の端の薄を差覗きつゝ、やがて
月明かに出づ。
空晴れて、
月明かなるが、向ひ風寒く且つ鋭くして、面痛く、體を進むるに勞多し。