丹那という土地は四方を高い山々で取囲まれていて、窪地の中央に
水田があって、その周囲に農家がチラホラとあるに過ぎなかった。
私の書斎の下は音無川で、一方は
水田であり、自分の家の物音以外は殆ど音というものがない。
しばらくすると、薄墨をもう一刷した、
水田の際を、おっかな吃驚、といった形で、漁夫らが屈腰に引返した。
青芒の茂った、葉越しの谷底の一方が、
水田に開けて、遥々と連る山が、都に遠い雲の形で、蒼空に、離れ島かと流れている。
田舎は——殊に
水田の多い、本所の東に開いた田舎はかう言ふ育ちかたをした彼には少しも興味を与へなかつた。
鮒は、秋の半ば過ぎると、
水田や細流から大きな流れへ落ちていく途中、充分に餌を採って、やがて暮れ近くなると静かな流れの深いところへ巣籠ってしまう。
ところが表日本は冬陽当たりがよく暖かいにも拘わらず
水田が少なかったのである。
田舎は——殊に
水田の多い、本所の東に開いた田舎はこう言う育ちかたをした彼には少しも興味を与えなかった。
とにかく、私を十五の歳まで育てたこの部落は、背後に畑地の多い丘陵があり、前面に
水田が開けていて、農民小説には寔に都合のいい舞台を形成している。