重吉はこの茶の間へはいると、
洋服を和服に着換えた上、楽々と長火鉢の前に坐り、安い葉巻を吹かしたり、今年やっと小学校にはいった一人息子の武夫をからかったりした。
褪紅色の
洋服に空色の帽子を阿弥陀にかぶった、妙に生意気らしい少女である。
が、ここへ来ている連中の中には、一人も
洋服を着ているものがない。
着ているのは黒の背広であるが、遠方から一見した所でも、決して上等な
洋服ではないらしい。
そして注意して見ると、そんな時に限って、美佐子の
洋服には青い草の汁がついていたり泥がついていたりした。
その時彼は葉巻を啣へて、
洋服の膝に軽々と小さな金花を抱いてゐたが、ふと壁の上の十字架を見ると、不審らしい顔をしながら、
黒い詰襟の
洋服を着た二十四五の先生が一人、(いえ、わたしの学校の先生ではありません。
と石井翁は消えゆく煙の末に浮かび出た
洋服姿の年若い紳士を見て思った。
無論、近藤夫人の好意は、
洋服丈には止まらなかった。