夜番の鳴らす拍子木の音が、屋敷を巡って聞こえるのさえ、今夜は沁々と身に
浸る。
それに彼の強い性格と溢れるような精力は、彼を過去の愚痴や甘い追憶などに
浸る事を許さなかった。
そのようにして私は、真夏の白昼舌のような火炎を作り、揺らぎのぼる陽炎に打ち震える、夏菊の長い茎などを見やっては、とくりともなく、海の幻想に
浸るのが常であった。
Hは朦朧たる酔眼にこの景色を眺めると、如何にも日本らしい好い心もちに
浸る事が出来た。
この一行の行手には早くも*プショール河が見えだして、まだ遠くから、清涼な河風がもう頬を撫でて、それが堪へがたい酷暑の後でひとしほと身に
浸みるやうであつた。
譲吉は夫人に金を借りてでも、洋服を新調したい積りであったから、夫人のこうした好意は、骨身に
浸みる程、有り難く感じたのである。