さうして、時をり降りそゝぐ小雨が、しと/\と湿つぽい
温気をもたらしてくると、ふと庭の隅々から小さな草の芽生を見出すことが出来た。
蒼空は培養硝子を上から冠せたように張り切ったまま、
温気を籠らせ、界隈一面の青蘆の洲はところどころ弱々しく戦いている。
山越しに木曾路へ出て、汽車に乗るとすれば、トンネル又トンネルがあつて、この
温気に、土竜のやうに、暗の窖を這ひ、石炭の粉の雨を浴びなければならない。
蝋燭の焔と炭火の熱と多人数の熱蒸と混じたる一種の
温気は殆ど凝りて動かざる一間の内を、莨の煙と燈火の油煙とは更に縺れて渦巻きつつ立迷へり。