「観音さまの御利益があろうかのう」と、藻はおぼつかなげに
溜息をついた。
そんな時「青蘭」の女達は、席をへだてて客の相手をしていながらも、そっと顔を見合せては、そこはかとない
溜息をつく。
女は愚痴話をしながら、家に残して来たその子供のことを思い浮べると、酔も醒めたように、ふと押黙って
溜息をつく。
小初は腰の左手を上へ挙げて、額に翳している右の腕に添え、眩しくないよう眼庇しを深くして、今更のように文化の燎原に立ち昇る晩夏の陽炎を見入って、深い
溜息をした。
母はこういってしばらく口を閉じ、深く考えつつ
溜息をつく。
「お引受け下すって、どうも有難とう存じます」トシ子嬢はホッと
溜息をついた。
室内の先客である川波大尉と星宮理学士との二人が、同時にハアーッと
溜息をつくと、同時に言葉をかけた。
成経は成経で、妖怪に憑かれたような、きょとんとした目付きで、晴れた大空を、あてどもなく見ながら、
溜息ばかりついている。
妻はその暇にようやく追いついて背の荷をゆすり上げながら
溜息をついた。