僕はこの耳を得なかつたとすれば、「
無精さやかき起されし春の雨」の音にも無関心に通り過ぎたであらう。
けれども大の
無精ものと見え、鼻涕をかむのさへ宦官たちにかんで貰ふと言ふことである。
僕はこの耳を得なかつたとすれば、「
無精さやかき起されし春の雨」の音にも無関心に通り過ぎたであらう。
それも僕流の
無精から、夏休みの終りに近い頃、山から東京へ帰つて来た序にといふ条件を附しておいた。
ただ、元来
無精な所から、何も近所にあるものを嫌ってまで、遠くの風呂へ行くにも及ぶまいじゃないかといった点で、別に是非をつけてはいなかったのである。
これは映画と女とを一緒に軽蔑してゐるやうに聞えるが、決して女も映画も軽蔑してゐるわけではなく、全く
無精だからである。
「だんな、お
無精をなさっていらっしゃるとみえまして、おさかやきが少しお伸びのようでござんすね」
が、生来の
無精のために埃やインクにまみれたまま、時には「本是山中人」さへ逆さまになつてゐるのである。
鷺も亦
無精をきめてゐるのか、髪の臭さは一通りではない。