彼の顔のまわりには、十人あまりの顔が、皆まん中に置いた
燈火の光をうけて、赤く幕営の夜の中にうき上っている。
が、その東京の町々の
燈火が、幾百万あるにしても、日没と共に蔽いかかる夜をことごとく焼き払って、昼に返す訣には行きますまい。
曲り角から三軒目の家を見ると、入口がパン屋の店になつてゐる奥の方の窓から、
燈火の光が差して、その光が筋のやうになつてゐる処丈、雨垂がぴか/\光つてゐる。
「防空壕やったら、あんた、誰に気兼遠慮もいらんし、夜空襲がはいっても、身体動かす世話はいらんし、
燈火管制もいらんし、ほんま気楽で宜しあっせ」
——
燈火を赤く反映している夜空も、そのなかにときどき写る青いスパークも。
この倶楽部が未だ繁盛していた頃のことである、或年の冬の夜、珍らしくも二階の食堂に
燈火が点いていて、時々高く笑う声が外面に漏れていた。
蝋燭の焔と炭火の熱と多人数の熱蒸と混じたる一種の温気は殆ど凝りて動かざる一間の内を、莨の煙と
燈火の油煙とは更に縺れて渦巻きつつ立迷へり。
彼女は馬車が鹿鳴館の前に止るまで、何度いら立たしい眼を挙げて、窓の外に流れて行く東京の町の乏しい
燈火を、見つめた事だか知れなかつた。
長「真暗だから見えねえや、鼻ア撮まれるのも知れねえ暗え処にぶっ坐ッてねえで、
燈火でも点けねえ、縁起が悪いや、お燈明でも上げろ」