雪国で泊つた一夜、炉辺で話をしてゐると、煤けた天井の
暗がりから一匹の蝙蝠が羽音をバタ/\させながら頭上をとんで別の一隅の
暗がりへ消えていつた。
勿論、そのあいだの五間にはともしびを置かないで、途中はすべて
暗がりのなかを探り足でゆくことになっていた。
と私は、
暗がりをもっけの幸いにして、自分でも歯の浮くような饒舌をふるった。
ぼくは、或る工場に誕生すると、同じような形の仲間たちと一緒に、一つの函の中に詰めこまれ、しばらく
暗がりの生活をしなければならなかった。
小川昇氏は
暗がりにばかりゐるので、よく見えなかつた。
ある夜、暗い道を自分の淋しい下駄の音をききながら、歩いていると、いきなり
暗がりに木犀の匂いが閃いた。
その薄ら茫やりとした
暗がりの中には、地図のような血痕の附いた行衣を着て、一人の僧形をした男が直立している。
(
暗がりを手さぐりで歩いてゐることを思ふとさみしい)
やがて坂の下口に來て、もう一足で、藪の
暗がりから茗荷谷へ出ようとする時、