振仰ぐと葉越しに濃厚な夏空が輝いており、砂丘一面に蝉の鳴き澱む
物憂い唸りが聞えた。
信夫は留守、さうして
物憂い白昼、私は時々どこかしら一つの部屋に、唐紙の隙間をもり廊下を漂ひ壁と空気の間に沿ふてひそ/\と流れてく奥さんの気配を感じた。
背鏡で時どきそれを盗み見ながら、ロシア帽子の運転手は
物憂い調子でハンドルを切る。
保吉は
物憂い三十分の後、やっとあの避暑地の停車場へ降りた。
そのくせ惻々として町全体に
物憂いやうな、打つちやりはなしたやうな、無言のエロティシズムが充満してゐる。