引越しより前に一度、四月の末ごろグラジオラスの
球根といちごの株を持つて彼女と二人でこの庭に植ゑに来たことがあつた。
それを手にして堤下を少しうろついていたが、何か掘っていると思うと、たちまちにして春の日に光る白い小さい
球根を五つ六つ懐から出した半紙の上に載せて戻って来た。
ダリヤの
球根を持つて行つてあげた時ね、あん時なんか、みんなお庭にゐたのよ、それにあの人だけ、あたしの方を振り向きもしないの。
——先生、御覽下さいまし、逸品も逸品、珍の珍とも申したいこの一株の
球根は東羅馬皇帝の後宮にも百年に一度しか咲かぬ花の種で御座います。