蒲田が一挙に何万といふ強制疎開のときは
箪笥が二十円で売られたもので、これを私からきいた荒正人はすぐにも蒲田へ駈けつけて
箪笥を買ひたさうな顔だつた。
情景 中流階級のつつましやかな家、六畳の間、正面に
箪笥があって、その上に目覚時計が置いてある。
それからちょっと
箪笥の上の披露式の通知に目を通し「何だ、四月の十六日じゃないか?」と言った。
風は夜になつて消えてしまつた、
箪笥の上に置時計がのつてゐる。
桐の小
箪笥だけが、彼の永い貧乏な生活の間に売残された、たつたひとつの哀しい思ひ出の物なのであつた。
其処には
箪笥やら蠅入らずやら、さま/″\の家具類が物置のやうに置いてあつて、人の坐るところは畳一枚ほどしかなかつた。
尤も当時は俄仕込みの薬屋をやつて居りましたから、正徳丸とか安経湯とか或は又胎毒散とか、——さう云ふ薬の金看板だけは薬
箪笥の上に並んで居りました。
離れには黒塗の
箪笥が来たり、紅白の綿が飾られたりした。
定めしその
箪笥の中には、貴女の心配になるのも無理のない何かがあるのであろう。