萩は田舎乙女の
素朴と都会婦人の洗練とを調和して居るかと思へば、小娘のロマン性と中年女のメランコリーを二つながら持つてゐる。
——少い経験にしろ、数の場合にしろ、旅籠でも料理屋でも、給仕についたものから、こんな
素朴な、実直な、しかも要するに猪突な質問を受けた事はかつてない。
大きな自然のふところにいだかれて、原始人のような
素朴な生活がつづいた。
素朴な野薔薇の花を交えた、実りの豊かな麦畠である。
その上、
素朴な一般武士の頭には、延喜天暦の昔に還らんとする、難しい王政復古の思想など、本当に理解される訳はないのである。
母は不器用なかたちで、風流と言ったような、気のきいた点は少しもなかったが、それでいて自然の美に対する
素朴なアコガレを持っていた。
しぼがやたらに荒くつて、もめんのやうな感じの
素朴なちりめん。
澄んで居ても重く湛えた水、山々が松のみどりを押畫のやうに厚く疊んだ
素朴なしかも濃艷な風景を思ひ浮べた。
私がこれから書こうとしているきわめて奇怪な、またきわめて
素朴な物語については、自分はそれを信じてもらえるとも思わないし、そう願いもしない。
そうかといって職業上の名の小そのとだけでは、だんだん素人の
素朴な気持ちに還ろうとしている今日の彼女の気品にそぐわない。