わずかに僕が覚えているのは
胸に挿していた石竹だけである。
あなたはその
胸の十字架に懸けても、きっと約束を守りますか? いや、——失礼は赦して下さい。
が、悲しみは消えないばかりか、前よりは一層彼の
胸へ、重苦しい空気を拡げ出した。
天に在っては比翼の鳥、地に在っては連理の枝、——ああ、あの約束を思うだけでも、わたしの
胸は張り裂けるようです。
彼女は水色の夏衣裳の
胸にメダルか何かをぶら下げた、如何にも子供らしい女だった。
すると、膝も、腹も、
胸も、恐らくは頃刻を出ない内に、この酷薄な満潮の水に隠されてしまうのに相違あるまい。
それ程彼女の
胸の中には、愉快なる不安とでも形容すべき、一種の落着かない心もちが根を張つてゐたのであつた。
赤いフリージア帽を頭に載せ、しゃんとからだを伸ばし、眼つき鋭く、
胸飾りも引立ち、彼女は両方の耳で代るがわる聴き耳を立てる。
ガラス窓から長方形の青空をながめながら、この笑い声を聞いていると、ものとなく悲しい感じが
胸に迫る。