肉を箸につまんで
舌端に乗せれば、唾液にとけて、とろとろと咽喉に落ちる。
『大井川のくじらは、婦人にしてその味を知るなり』と、言うことからそれは別として山鯨、なめくじら、海豚に至るまで、その漿を
舌端に載せてみた。
美漿融然として
舌端に蕩け、胃に降ってゆく感覚は、これを何に例えよう。
新秋の爽涼、肌を慰むるこの頃、俄に耽味の奢りが、
舌端によみがえりきたるを覚える。
ことに鱒科の魚は油になじみがよく、天ぷら、ふらいにすると、やわらかな甘味が
舌端に溶ける。
水玉を一献
舌端に乗せて、ころがすと、その水はどこの井戸、どこの湖水から汲んだものかをいい当てるほど、水に趣味をもっている。
殊に鰍は冬が来ると、こまやかな脂が肉に乗って骨がもろく、川魚特有の淡泊な風味のうちに、
舌端に溶けるうま味を添えてくる。
いかに生がきに満幅の好意を傾けて、食卓の上で、剥いては食い、割っては食おうとも、その味は遂に
舌端だけのものであって、人の心魂に味到する底のものではなかった。
)一切の不平、一切の経験、一切の思想、——つまり一切の精神が、この二時間のうちに、機を覗ひ時を待つて、吾が
舌端より火箭となつて迸しる。
)一切の不平、一切の經驗、一切の思想——つまり一切の精神が、この二時間のうちに、機を覗ひ時を待つて、吾が
舌端より火箭となつて迸しる。