船は小さくて怒濤に呑まれんばかりに揺れるし、犬や豚のように船底に積み重ねられた男女三十余名の密航団は、
船員達に踏んづけられ虫の息である。
いわば西部劇的な冒険児の半生を歩いてきた人であったが、その気質はいわゆる東洋を股にかけた
船員や商人とはだいぶ違っていた。
だから濃霧の夜などはことに事故が多く、
船員仲間からは魔の岬と呼ばれてひどく恐れられていた。
昇龍丸は無事故国に帰りついたが、帰国の途次、畑中は
船員にはかって、
その堀と堀の間には、たくましいクレーンの群が黒々と聳え立って、その下に押し潰されそうな白塗りの
船員宿泊所が立っている。
そのとき、甲板にぞろぞろ出て来た
船員たちの中から、半裸の中国人が一人、前にでて、
底に木を打った草履をひきずッて、食物バケツをさげた
船員が急がしく「おもて」の船室を出入した。
どれほど熟睡していても、時間には鋭敏な
船員らしい倉地の様子がなんの事はなく葉子をほほえました。
私は、彼が、
船員衣類箱(註三)を後から手押車で運ばせながら、宿屋の戸口のところへのそりのそりと歩いて来た時のことを、まるで昨日のことのように覚えている。