江東橋から電車に乗ろうと、水のぬるんだ、草
萌の川通りを陽炎に縺れて来て、長崎橋を入江町に掛る頃から、どこともなく、遠くで鳴物の音が聞えはじめた。
透き通る様な青い若葉が門扉の上から雨後の新滝のやうに流れ降り、その
萌黄いろから出る石竹色の蔓尖の茎や芽は、われ勝ちに門扉の板の空所を匍ひ取らうとする。
浅々と青く
萌初めた麦畠の側を通りますと、丁度その畠の土と同じ顔色の農夫が鍬を休めて、私共を仰山らしく眺めるのでした。
一つは枯れて土となり、一つは若葉
萌え花咲きて、百年たたぬ間に野は菫の野となりぬ。